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貴女をお守りします。ずっと、傍で……
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ボカロ小説、まだ再掲載の話。

てかもう少しで終わりますよ。
で、未公開の続編を連載します。


此の辺から雲行きが怪しくなってくるんです、はい。








 
 
「……マジかよ」
 賢吾のその顔は本当に妙なモノを見るような目だった。
「おいおい、言ったその一日後に彼女が出来ているってどうよ」
 ははは。こっちが聞きたい。
「……もうヤったのか?」
「するかッ!」
 断じてない! ……危なかったけど。しかし、矢張り理性は強かった。アンドロイドと云う事実と、そしてまだあって間もない少女を襲うほど、オレの理性は上手く出来ていなかった。
「それで住民票が欲しいだぁ? マジか!? マジでお前……」
「違う! 頼む、何も聞かずに住民票をくれ」
「……まぁいいけどよ。ほれ」
「ありがたい。今度飯でもおごらせてくれ」
「ああ。それにしても、身寄りのない少女ねぇ……お前、御袋さんには話したのか?」
「いんや」
「おいおい」
「だって話したら猛反対な上に、殺されるでしょう。女の子と住んでいるなんて、聞いたら母親と親父がなんと言うか……」
「まぁ、察する」
「そう言う事だ。いいか、これはオレ達だけの秘密だぞ」
「へいへい。……こんどいい女の子が見つかったら紹介してくれよ。じゃあな」
 そう言って賢吾は行ってしまった。ありがたい。
 話を付けたオレは、ミクに振り返る。
「これでOK。住民票だよ」
「はぁ……しかしミオ様」
「ん?」
「別にこのまま隠しても良い様な気がするんですけど。寧ろそっちの方が……。私が未来から来たとバレれば、多分、色んな人が私を狙います」
 ……確かに、そこまで考えて居なかった。多分、オレはてんぱっていたんだ。女の子と一緒に寝ちゃったと云う事実のせいで、この子とずっと居ようと思っていたんだ。――今振り返ると恥ずかしい限りだ……
「……そ、そうだな……全く気付かなかった。まぁ、念の為にこの住民票は持っておこう」
 今更返すのも、あれだしな。うむ、何かの役に……立たないと思うけどな。
 さて、これで全ての問題は解けたわけだ。これから如何するべきか……
「取り敢えず、君を作り出したヒダカ社について少し調べてみようかな……」
「はぁ。私の生みの親は随分昔の人間だそうです。ふらりと会社に現れて、私を開発して、広めた人です」
 ふむふむ。態々調べなくても目の前に情報の貯蔵が居るわけだからそこまで頑張らなくても良い訳か……
「データ照合としては、家は此処からそこまで遠いわけでは無いようです」
 まぁ未来の話だしな。
「そっか……ならオレ達も帰ろうか。オレなんか昨日今日でやけに疲れたよ……」
「そうですか……では帰りましょうか」
 そうだな。でもその前に昼時だし、何か食べて行くか。
 
 
          ×          ×
 
 
「未確認飛行物体?」
 其処、警視庁の一室では一人の刑事にその様な噂が耳に入ってきていた。
「はい先輩。笑える話ですよね、都会のど真ん中で飛行物体ですよ。地面に落ちたってんで昨日俺の知り合いが出動したそうなんですよ。それがてんで出鱈目で、何も落ちた形跡なし、あるとしたら比較的新しい足跡だけ。まぁ念の為に生活安全課がその足跡の人間を探して一帯に聞き込みしているそうですよ。
 はい、コーヒーっす」
 コーヒーを部下より受け取る刑事。名を黒田雄介。警視庁直轄の刑事であり、つい先日自らの請け負っていた事件を解決させ、久しぶりに雑務のみの仕事を堪能していた中、自らの相棒とも言える後輩が持って来た話のネタはその未確認飛行物体であった。
 資料が頼んでいないと云うのに目の前に出される。面白半分に、雄介は微笑しながら資料を眺める。証拠写真として袋に入った写真には、確かにぼやけている光が、何か渦を巻くかの様に地面に向かっている。
 ……確かに、未確認物体とは言える。
「合成じゃないのか? こんな悪戯、今まで無かった訳でもないだろう」
 長年の勘である。この様な写真には目立ちたがり人物の影が見え隠れしている物である。
「はぁ……一応科捜研に送って合成ではないと言われたんですけどね」
「……そう云う事を先に言え。で? 未確認飛行物体だと、国の何処に電話掛ければ良いんだったかね」
「いやー、それは国が許してくれないでしょうよ、先輩」
 だろうな、と雄介は頭を掻き、笑顔を見せる。
 写真を再び眺めて、雄介は立ち上がる。
「ま、少しぐらい、な。興味がないわけでもない。一応俺も少年だったからな、こんな未確認飛行物体が居るなんて夢を持っていたわけだ」
 上着を翻し、雄介は歩き始める。それを部下が追う。
「調査にいくんすか?」
「ああ。ま、悪戯か如何かぐらい確かめておこうと思ってな」
 
 
          ×          ×
 
 
「……」
「――」
 ……何か良く解らないが、色々と物色しているみたいだ、ミクは。何か拙い所にでも連れて来たかな。
 オレがミクを連れて来たのは家の近くに存在しているお好み焼き屋で、オレの友人その二がバイトをしている所だ。色々とオマケをしてくれるから来たんだけど……。ミクを見るなり色々と言った後、苗字を伝えたら落ち込んでいたなー。そりゃそうか。オレと同じ苗字で……一応従妹と云う理由を適当に付けておいて、こっちの方に引っ越してきてオレの家に厄介になる旨を伝えた。
 で、今ミクが何やらお好み焼きを眺めている。
「……これは合成では無いんですか? 本物の豚肉ですか?」
 とか何とか言っている。ええ、まぁ本物の豚肉ですが何か?
「本物を見たのは初めてです」
 ……そうか、未来では皆合成されているのか?
「はい。日本は輸入を著しく制限されています。二〇九八年時点で日本の食糧自給率はほぼ一〇〇パーセントです。二〇六〇年時点では石油に代わる新たな燃料も作り出されています。それを私達は「合成燃料」と言っています」
 そうか……。で? それは低コストなの。
「はい。我々アンドロイドも、その合成燃料で動いています」
 ええと。その場合、その合成燃料とかが切れるとミクは動かなくなるんじゃ……
「その点は大丈夫です。我々のような高性能なアンドロイドは、口にした食料の中から合成燃料に必要なモノを抽出して、それを合成、燃料とする事が出来ます」
 成る程、未来は進化しているな……
 そんな事を話していると、お好み焼きが焼きあがる。
「よっ」
 掛け声よろしく、オレの友人その二が焼きあがりを見るなりやってきて引っ繰り返す。
「いやーお前もこんな可愛い彼女作っているなんてなー。知ってるか? 従妹同士は結婚できるんだぞ」
 そんな事はオレだって知っているよ。
「その、アンドロイドとか、未来の合成燃料とか云うヤツ、新しいアニメのやつ? なになに?」
「……え、あー、いや、オレ、ビジュアルノベルでもやろうかなーとか思っててなー、それでそのシナリオとして考案しているヤツなんだけど……」
「なんだそりゃ。お前それやめた方がいいぞ、シナリオ的にイマイチ!」
 お好み焼きが焼けたのを見て、オレの友人その二、名前を松田誠司は向こう側へ行ってしまった。次のお客さんが入ってきたんだってさ。
 その横で、ミクは黙々とお好み焼きを口の中に運ぶ。
「うわ、美味しいです。本当にこれ、合成じゃないんですか? 信じられないです」
 なんて事を言いながら食べている。……そう考えると、未来はなんか嫌だな……なんでもかんでも合成みたいで……
「牛肉も、鶏肉も合成ですね。偶に生モノもありますけど、高価です。はふ」
 でも生モノはあるんだな。値段は今の松坂牛ぐらい? そんなだと皆が食べるのは合成だよな。
 さて、オレも食べないと焦げる上にミクに全部食べられてしまう。未来に全て合成になるんなら、今の内に生モノを食べておきますか。
 
          ◆
 
「有り難う御座いましたー」
 食い終わったら帰ろうと云う話だったので、オレとミクは家に帰る事にした。家に帰ったら色々と話し合う事が盛り沢山だ。――特に寝るところとか、料理とか、風呂とか、色々と……まぁ色々と……。それやっとかないと、オレの精神が持たない。
 満腹になった為か、ミクは何か先程から眠そうだ。……アンドロイドも眠くなるのか……
「はい、一応……仕組みは……人間と……同じですので……生理現象もありますし……お風呂とかも……入らないと……清潔に……体を……保てません……」
 ……はぁ、その言葉の合間にあった無言は、舟をこぎ始めているからかな。てか本当に人間みたいだな。
「はい。少なくとも、私はその様な生活を送ります」
 トイレとかも必要って訳か……未来のアンドロイドはやけにリアルだな。それで不便な事って無いのか?
「ええ、まぁ……必要の無い機能ですけど、人間らしさが無いと人は安心できませんとの事だと私は少なくとも思ってますけど」
 成る程ねー、あんまりロボット過ぎるのも問題って訳ですか。確かに感情も、人間らしさも無いロボットに看病されるのはオレも抵抗あるけど。それじゃあ、トイレ言っている間とかに何かあったら拙いでしょう。
「はい。でも私達も〝絶対〟と云う訳では無いので、人間よりは我慢が聞きますし、最大二四時間は大丈夫です」
 その点はちゃんと考えてあるのね。
 そんなかんだで、オレ達はミクが降って来たあの公園に辿り着いた。
「……それにしても、どうしてミクは降って来たんだ?」
 降って来た場所にあるベンチに座って、オレはミクに問うてみる。
「あれは……解りません。過去への歩行の際、そのタイムホールの出口が開いたのが、此処の上空と言わざるを……」
 得ないか。……まぁそうだろうね。て事は、ミクは自分でも解らない内に過去に来たわけか。
「そうなりますね。誰が何故そうしたのかは解りませんが……誰かの意思によって、私は過去に送られたと考えるのが妥当だと思います。勿論、事故と云うケースも有り得ますし、実際、そっちの方が私的には濃厚だと思います」
 そうか。なんにしろ、ミクはこっちから未来に帰る事は出来ないわけか……
「はい。此方の世界の技術ではそれは不可能です。帰ると云うのであれば、向こう側の人間が私をタイムワープさせる必要があります」
 うーん、普通に考えると事故でタイムワープしちゃった場合は直ぐにでもミクを未来に戻すのが普通だと思うんだけど……今のところそう言う気配もないし、ってことはミクはやっぱり誰かの手で過去に送られたんじゃ……
「でもそれでは、何故私が過去に送られたかの謎が残ってしまいます」
 そうなんだよなー。そればかりは如何しようも無いと云うか、解決しようが無いと云うか……
 まぁ兎に角、ミクは今過去に居て、未来に帰れない。その間、オレの家に居るって事でOK?
「はい。……お世話になります、ミオ様」
 ぺこりとお辞儀をするミク。……本当に一同一同が、オレの心臓を鷲掴みにすると云うか、なんと云うか……
 
「ちょっと、良いかな?」
 
 と、そこで何か不純なモノが入ってきた。……其処には、スーツを着たおじさんと、若い兄さんが居た。兄さんの方は何か嫌に辺りを見渡しているし、おじさんの方もおじさんで嫌な笑みをオレに向けてくる。……怪しいおっさんだな。
「そんなに警戒しなくて良いよ。おじさんは二、三点、キミに聞きたいことがあるんだ」
 ……悪いですけど、知らないおじさんに声をかけてもらっても、答えないのが流儀なんだ。それが困っているお爺さんならまだし、完全に怪しいおっさんですからね。
「それはそれは申し訳ないね。私、こう云うモノなんだけどね……ほい、ドラマとかでよく見るかな?」
 ああ。良く見る。其処には警察手帳があった。
「警察がオレ達に何のようですか?」
「デートの途中ならすまないね。――実はね、この公園で先日ちょいと妙な事件が起きてね。なんと、未確認飛行物体が落ちたっての」
 ――その言葉に、オレの心臓が跳ねた。
「……へぇー、そりゃまた。UFOでも出たんすか?」
 兎に角、関係無い様に振舞うしか無い。多分、その未確認飛行物体って、ミクの事だろう。まぁアレだけ大胆に落ちれば誰かに見つかるのも無理ないか……いや待てよ? 夜だったし、辺りは暗闇だったし……でも未来から来たんだしな、次元歪曲とか、そんな感じの電波でも発生して偶然見ちゃったーとか。
 何は無くとも拙い。シラを切り通さないと、疑われて警察なんて行きたくは無い。
「あ、それ――」
 ってミクぅぅぅぅぅぅぅぅッ! キミは何故に! 事態をややこしくするスキルを――――――ッ! 発動するかァ!
 急いでオレはミクの口を塞ぐ。むぐっ、と声を上げてミクはそれ以上言うのをやめた。
「ん? それ?」
 流石警察。今の一瞬のミクの言葉を聞き逃さなかった。
「いえ、まぁこの子ちょっと変わった子でして……はは」
 やばい、不信感もたれたかな?
「……まぁいいや。なんか思い出したら此処に電話してよ。それじゃあ失礼、カップルさん」
 そう言ってやけにあっさりと刑事さんはオレに一つの名刺を渡して部下と一緒に行ってしまった。……黒田雄介? 刑事さんの名前か……。そのまま捨ててしまっても良かったけど、オレはそのまま持っておく事にした。
 
          ◆
 
「いいんすか? あんなもん渡して。他の人間には渡さなかったのに……」
 雄介の部下である松橋宏隆は自らの上司の、あの少年少女に対する違った態度に不信感を持っているのであろう、問いただす。と、上司たる雄介は、少し苦笑をして――
「あのお二人さん、何かを隠しているぞ」
「はい?」
「長年の勘だよ。あの少年は上手く隠してたけどな、彼女さんは隠し事が苦手らしい。常時何かを言いたげだった。何かあれば、あのお嬢ちゃんは話してくれるかも知れない。だから名刺を渡したんだよ」
 先輩の一つ先を読んだその行動に、宏隆は流石、と内心思った。
 
          ◆
 
「……すみませんマスター」
「いや……まさか警察が動いているとはオレも思わなかったよ。てか何だ、あの刑事、こっちの事情を解っていてわざと見逃したような気がして……」
「まさか。人の心を除く人間なんて、ロボットでも無理です」
 それはアンドロイドが云う台詞か。いや、アンドロイドだから言えるのか……
「兎に角、早く家に帰ろう。そうすればもう大丈夫だって」
「はい」
 こうしてオレ達は家に戻る事にした。
 
 
                              to be continued......
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