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貴女をお守りします。ずっと、傍で……
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またもや単発ボカロ小説。

今回は短期連載で、ルカレンの小説。








 



 
 
 /メグルオ(モイ)ト
 
 
 ――Fortune Girl , Mirror Boy――

 
 私の名前は巡音ルカ。……三番目――いいえ、正確には、四体目に生み出されたボーカロイド。某音楽会社によって作られて、今では多くのコンサートを行なう歌姫――と、呼ばれています。私には、良く解りませんけど……只、歌って、私が、そして人々が幸せになれると云うのは、やっぱり、とても良い事です。
 ボーカロイドは電子で作られた人工の声です。技術が進化して、人の声に近付いても、それは普通の人と違って、声がかすれたり、変わったりしないだけです。人工の声には、普通の人の様に音の強弱を、感情を込めて、する事はあんまり得意じゃありません。
 それでも、私の心の中に、人の心はある。プログラムとして入力されたものでも、それは私にとっては真実です。本物の人の心なんです。
 
「ルカおねーちゃん」
 …………目を開けると、そこには私の顔を覗き込んでいる男の子が居ます。
「どうしたんですか? レン君」
 どちらかと云うと、生産、企画上を考えると、私の方が妹なんですけど、設定年齢上は、私が年上と云う事になっています。だから、レン君――苗字は鏡音くんです――は私にちょっと控えめに話しかけてくるんです。だから私も、少し、お姉さん視点で言葉を選んでいます。
 それよりも、レン君、如何したんですか?
「ううん、リンを見なかったかなって――聞こうと思ったんだけど……」
「リンちゃん? いいえ、見ていませんわ」
「そっかー……………………何処行っちゃったんだろう」
 何処でしょうかね――? 私にも解りません。
 それにしても、流石は双子さんですね。やっぱり一緒に居る方が良いのですか?
「ううん。そうじゃないけど……最近リンの様子がおかしくて……」
 最近、ですか?
 うーん、と呻きながら、私はリンちゃんの言動と、そして表情を記憶の中から引き出して来る。――私達のメモリは、そんなに難しく出来ていなくて、やっぱり、新しい記憶の中に埋れてしまうので、思い出すには様々な回路に接続して、記憶を引っ張り出して来ないと行けません。その辺りは、ボーカロイド――つまりアンドロイドの様な存在なんですけど、不便です。
 そもそも、私はまだこのボーカロイドの一員になったばかりでして、余り一緒に行動した事がありません。テレビ番組も、最新式と云う話題だけで、出る事が多いので、私の方が今はスケジュールがいっぱいですし。
 そうかぁ、と残念そうに項垂れるレン君に、私は微笑する。鏡音姉弟ちゃん達は、表情豊かで、感情表現が凄く単純で、羨ましいです。私はどうしても、後手に回ってしまうので……本当に、おとなし過ぎると云うのかもしれませんね。
 ハードな歌は良く歌いますけど、それでも私本来の性格は変えられない。それは人間と同じ事です。
 目の前でガッカリするレン君を見ていると、何かをしなくちゃ、と云う念が湧き出て来ます。どうしてでしょう? でも私もボーカロイドと云う人じゃない存在でも、人に造られた以上、人に近い心を持っているのかも知れません――恐らく。
「じゃあ、私も一緒に探します」
「ほんと?」
「はい」
 ぱぁ、とレン君の顔が輝く。……やっぱり、笑っていた方が良いです。
「じゃあ行きましょうか」
 ぎゅ。
 私がレン君の手を繋いで歩きだすと、つん、とその腕が引っ張られる。――?
「えーと……」
 顔を朱に染めて、その場で止まっているレン君。――あ、そうですか……そうですよね……ごめんなさい。
 手を離すとちょっと気まずい雰囲気がその場に流れる。互いに下を向いて、顔を朱に染める。メモリが、機械が、オーバーロードを起こすから私達の顔は朱に染まる。良く解りませんけど、感情が変化すると、この様に顔が朱に染まる――とは聞いています。
 
「――で、結局リンは見付かったの?」
 ぐい、とお酒を飲みながら、MEIKOお姉様は私に訊く。――いいえ、結局見付かりませんでした。何処に行ったんでしょうかね……
「いや、私に訊かれても……。そもそも、今日は私、ミクとKAITOと一緒に仕事だったし」
「私達はオフでしたから」
「そうね」
 もう一度、お酒を呷る。私も見習って、目の前に存在しているお酒を少し飲む。アンドロイドですので、年齢は余り関係ありません。でも、私達ボーカロイドが大衆に与える影響は大きいので、ミクちゃん、リンちゃん、レン君の三人は、お酒を飲みません。それに、味を感じる機関も子供に設定されているので、余り美味しいものでは無いと思います。
「そもそも、リンはどうして居なくなったのか――と、云うのが問題だと僕は思うけど?」
 隣で食べ物に手を伸ばしているKAITOお兄様は、その様な事を口にする。
 ……どうして、居なくなったか……ですか?
 んむ、と口の中の物を飲み干して、口を開くお兄様――
「そう。何事にも理由はあるだろう? 理由も無く、リンが姿を消すとは思えない。――もう子供でもないしね、プログラムの蓄積データ的には、ルカ、君よりも長いんだから」
「……そうですね……」
 でも、そう考えると本当に解りません、リンちゃんが居なくなる理由が……
「案外下らないものよ、あの子の理由なんて」
「おいおい。リンも色々とあるんだと思うよ?」
「KAITO、アンタちょっと優し過ぎ」
「MEIKO程じゃないよ」
 ――解りました。じゃあ、私これからまたリンちゃんを探しに行ってきます。
「ん」
「行ってらっしゃい」
 手を振るお兄様の姿を見て、私は居酒屋を出た。
 

                    </-to be continued-/>
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